シュウヤマンが行くシリーズ第2弾 琉星と詩音が鎌倉で見つけたうまいバランス
 携帯が鳴った。25年前から、鎌倉などで車のコーティングサービスを行う、プロテックスの鈴木義彦社長からだった。
 「シュウヤマン、いまから鎌倉プロテへ来られる? ちょっと見せたいものがあるんだ」

 見せたいものって何だろう…。鈴木社長の趣味はクラシックカー。会社のロゴや、2021-2023シーズンの鎌倉インテルのユニホームにも、所有するクラシックカーのデザインを採用しているくらいだ。さては、新たなクラシックカーを手に入れたかな?

 ワイはシュウヤマン。岡山出身で、実の名は、岡崎修也という。鎌倉インテル、トップチームのGKとしてゴールマウスを守りながら、営業スタッフのひとりとして、鎌倉を駆けまわっている。呼ばれたら、どこでも飛んでいくフットワークの軽さが持ち味だ。

 鎌倉市の北西部、関谷にある、鎌倉プロテへ到着すると、表には社長が普段、乗っている、アウディRS4がとまっていた。ここはプロテックスのフラッグシップファクトリー。カーコーディングの最前線で、卓越した技術を持つ、熟練クルーたちが働いている。
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 「シュウヤマン、見せたいのは、彼らなんだ」と話す鈴木社長の後ろから、現れたのは、つなぎ姿の男。「琉星じゃないか!」。鎌倉インテルのサテライト(2軍)で、同じGKとして活躍する、よく知る浅岡琉星(あさおかりゅうせい)だった。身長は183センチあり、正確なフィードと、ゴールマウス前から通る声で行うコーチングが持ち味だ。おまけにいつもニコニコしていて、人に愛されるキャラ。その琉星が、プロテックスに就職したのが5ヵ月前だった。鎌倉インテルは、本拠地のみんなの鳩サブレースタジアムが完成し、自由にいつでも自主練ができるようになった。ある程度、時間が自由になり、サッカーができて、カーコーティング技術を身に着けることができる。仕事とサッカーを両立したい琉星にとっては、理想的な職場と聞いていたが…。

 「シュウヤマン、ようこそ、鎌倉プロテへ。ようやく会いに来てくれましたね。はい、どうぞ!」と琉星は、いつもの笑顔で、手に持っていたつなぎを渡してきた。すると、その横から「シュウヤマン、プロの車の洗い方を教えましょうか?」と笑みの男が現れた。詩音だった。琉星と同じく、鎌倉インテルのサテライト(2軍)で、主に左サイドバックとして活躍する、清水詩音(しみずしおん)。運動量と1対1のフィジカルの強さが持ち味だ。詩音もプロテックスなら、ある程度、時間が自由になるので、サッカーと仕事が両立でき、さらにカーコーティング技術を身に着けることができるので将来へもつながる、ということで、6月から社員として働いている。戸惑う俺に、鈴木社長もニコニコ顔で「たかが洗車、されど洗車。今日はね、いかに琉星が成長したか、肌で感じて欲しいんだ。カーコーティングの基本中の『き』である、洗車の極意を琉星から学んでもらいたいんだ」
 カーコーディングとは、車の塗装の上を樹脂やガラスなどの成分で覆い、傷や汚れをつきにくくする処理のこと。紫外線による劣化も防ぎ、車をキレイな状態に保つことができる。最近は、新車ならディーラーがオプションでやってくれるが、寿命があるので、数年もしくは数カ月ごとに、定期的にコーティングをする人が多い。そのコーティング加工の前に、ボディーの汚れをしっかり落とすことが大事なのだという。でも車を洗うのに、そんな極意って必要なの? ただボディーを洗えばいいんじゃない?

 つなぎに着替えて、洗車ピットへ行くと、琉星が、社長のアウディの運転席に座って、慣れた様子で所定の位置へ動かしていた。社長の車が実験台ということか…。それにしても、高級車を颯爽とあやつる琉星、格好いいなぁ。さっそく、洗車の極意とやらを見せてもらおう。

 アウディの真っ黒なボディーに水をかけ、シャンプーをつけて、洗う琉星が笑みを投げかけてきた。「ちょっとやってみます?」。もちろん。丁寧にボディーを洗っていく。たかが洗車…。すると背後から詩音が、「そんなのんびりじゃ、仕事終わらないっすよ」と急ぎ立てる。
 「仕事は時間との勝負っすよ。時間内で、いかに効率よくきれいに仕上げるか」。ピッチの上では、やんちゃで、負けん気の強さがそのままプレーに出る詩音から、「効率を考えろ」なんて、言われるとは思わなかった。
※写真前列左が詩音 後列右が琉星
 詩音流の洗車方法は、琉星とは、ちょっと違うらしい。詩音が続ける。「洗車は人によって、やり方は違います。俺はホイールから洗います。スポンジとブラシを使い分けて優しく。次はボディー。シャンプーをかけて、水で流しながら、タオルで洗い流す。気を抜くと、すぐに傷がついちゃう。ボディーって、意外に繊細です。さらに拭きあげて、専用のブロアで水気を飛ばして、最後にもう一度拭いて終わり。早いときは、これを全部20分でやっちゃう。すごく汚れているときでも、1時間以内ですね」。

 はやい。まさに職人技。2人とも入社して半年しか経っていないのに。この成長ぶりはすごい。鈴木社長が見せたい、という理由が分かる。この洗車をマスターすると、次はいよいよコーディング加工だという。琉星も詩音も、まもなく、そのコーティング作業をやらせてもらえるようになるらしい。早い人なら、2年くらいで洗車からコーティングまで、ひとりで出来るようになるという。
 琉星が言う。「コーティングはもっと奥が深いんです。使う溶剤って、ものすごく種類があるし、ボディーを磨く研磨機の先につけるバフも、毛が短かったり長かったり。それぞれ組み合わせもある。メーカーや車種によって違うし、車の状態によって変わってくる。もっと経験が必要です。はやくひとりで一台を仕上げられるようになりたいっす」

 鎌倉の地で、サッカー続けながら、車の研磨職人の道も目指す、琉星と詩音。それにしても、なぜプロテックスは、みんなの鳩サブレースタジアムのスポンサーになってくれ、さらにユニホームのパンツスポンサーにもなってくれたのか。そのうえ、練習日は残業不可の鎌倉インテルの選手を雇用してくれている。企業として、どんなメリットがあるのだろうか。

 鈴木社長は言う。「僕は鎌倉にお店を構え、この地に育ててもらった。その鎌倉で新しく生まれたサッカークラブを応援したい。これから鎌倉インテルが強くなると、全国から、どんどん新しい若いサッカー選手たちが鎌倉を目指してやって来る。そのとき、サッカーしながら生活していけるよう、仕事も供給したい。そうなればうちも助かる」。
 なるほど、この人材難のご時世だからこそ、鎌倉インテルとプロテックスは、お互いを補完し合える、というわけか。仕事とスポーツの両立の難しさは、鎌倉インテルだけの問題じゃない。日本全国の社会人アスリートが抱える問題だ。とくにサッカーの場合、競技を一生懸命続けようとしたら、まず障壁になるのは残業。最近は週末の休みこそ、きっちり取れる職場は増えたけど、働き盛りの20代にとって、残業は避けられない。いまでも練習のある日は、「すみません。お先に」と小さくなってオフィスをようやく抜け出て、鳩スタへ集まって来る選手は少なくない。

 さらに鈴木社長は続ける。「長く会社を経営して、何百人という社員を見てきた。スポーツをやっている選手は、簡単に諦めない。一方、年齢を重ね、結婚をしたり、子どもが生まれたりしたとき、手に職があると強い。サッカーをやめて、故郷に帰るとき、技術があれば、独立することもできる。もっといえば、この仕事には、『この人に磨いてもらいたい』、というファンがついてきたら稼げる。琉星と詩音には、サッカーも仕事も一生懸命やって稼いで、いい車に乗って欲しい。鎌倉にそういう環境を作っていきたいと思っています」
 仕事とサッカーのうまいバランス。プロテックスのような企業が、鎌倉に増えれば、もっと鎌倉インテルは強くなるだろう。ありがたい。鈴木社長はきっと琉星と詩音の成長ぶりを見て欲しい、というのは方便で、本当はプロテックスと鎌倉インテル、そして琉星と詩音のみんなが幸せになるこの枠組みが、実際にうまく回り始めていることを見せたかったんだろう。そういえば、鈴木社長は、ファンがついたら稼げるって言っていたな。いいなぁ。ワイもいい車に乗りたい。転職するか!?

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